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手筒花火(炎の祭典)【豊橋市】

まちエリア 生産者の声

豊川市

少量多品種のバラ生産の強みを活かした6次産業化への挑戦
~バラの効能を伝え、人生で過ごす時間を豊かにしたい~

豊川特産 バラの花束生産者:有限会社天野バラ園 代表取締役 天野真光さん

バラの一大産地「豊川市」で少量多品種生産

豊川市は、国内有数のバラの産地だ。バラは全国どこでも作られているわけではない。バラの成育に適した温度は16度~26度とされ、その間でできるだけ温度をコントロールしながら、一年を通して栽培できる地域がいいのだ。豊川市は冬も雪が降らず日射量が確保されており、バラの栽培には適している。
その豊川市で1977年から親子2代に渡り、バラを栽培しているのが天野バラ園の天野真光さんだ。天野バラ園では、現在35品種のバラを栽培している。
バラはオランダやフランスなど世界のブリーダーから毎年100品種ほどの新品種が発表されるほど品種改良が盛んで、天野バラ園では、定番の品種だけでなく、新品種も栽培し、時には1年で植え替えをすることもある。こうした品種は生産者の目利きで選ばれる。生産性のほかに、色の濃淡、質感、花の形、伸びる茎の長さや太さ、とげの強さなど、細かい項目に判断基準がある。
天野バラ園では1日2000~3000本のバラを全国の市場へ出荷している。通常、バラ農家は同じ品種を多く作り、産地としての強みを活かす傾向にあるが、天野バラ園では、他の農家が作らない、扱いが難しく、デリケートなバラを生産し、ニッチなところで希少価値を高めている。こうした取り組みが、第63回 関東東海花の展覧会での農林水産大臣賞受賞につながった。
天野バラ園の栽培面積は2500坪ほどであり、毎年500坪ほどを順々に植え替えている。バラの苗は5年以上もつが、天野バラ園では3~5年程度で更新し、一つの温室に多品種のバラを植えている。オランダなど海外の温室は、一つの品種を一つのハウスで大量に作る方法をとっているが、天野さんは2500坪という限られた面積の中でどう特色を出すかと思考する中で、産地の違うバラを同じハウスで栽培する方法を取った。バラの栽培は、基本的に、16~26度の温度の中で管理すれば、成育的には問題はないからだ。生産のポイントは、バラの持っているポテンシャルをどれだけ引き出すかである。そのバラに合う仕立て方を探り、生産していく。例えば、バラははさみの入れ方が数センチ違うだけで成育が異なる。

天野バラ園の変遷

天野さんの家系は、先祖代々から所有する豊川市当古町の約1500坪の土地で、畑作や畜産を中心にした農家であった。しかし天野さんの父が20歳代の頃、バラの栽培が注目され始めていたことから、400坪の畑を温室にしてバラの栽培を起業した。その頃は、高度経済成長期で何を作っても売れる時代であり、豊川市では次々にバラを作る農家が増えていった。天野さんの父も所有する畑をすべて温室にする他、1000坪ほどの畑を借りながらバラの栽培を増やしていった。しかしバブル崩壊に伴い、徐々に業績が下がってきた。
一方、天野さんは、家業を継ぐまでは、音楽で成功することを夢描いていた。高校まで地元の学校で学び、高校時代にはバンド活動をしていた。そして、卒業後、海外で音楽活動をする夢の実現のために、1年間のワーキングホリデーとしてオーストラリアに語学留学した。帰国後、名古屋市に移住し、働きながらバンド活動を6年間行っていたが、25歳の時、音楽活動に区切りをつけ、家業を継ぐ決意をした。天野さんは、(公社)国際農業者交流協会が実施する研修事業に合格し、1年半、アメリカを代表するバラ園 Oregon Roses Inc.のオレゴンとカリフォルニアの農場で修行後、家業に従事した。そして、2020年1月、二代目となった。

バラ生産を軸に新たな取り組みを続ける「天野真光さん」の想い

11年前、天野さんがアメリカから帰国した当初は、父がバラ園を創業した時代とは真逆の厳しい状態であった。この頃からバラ生産を主軸におきつつ、何か新しいことをやらないといけないと考えていた。
その一つは、「アグリツーリズム」だ。天野さんが留学したカリフォルニアでは、ナパバレーというワインの産地があり、週末には観光客が訪れていた。醸造所を見学して、ワイナリーで試飲し、レストランを体験できる観光農園があり、天野さんはとても感銘を受けていた。そこで、10年前から、お客様にバラ園の温室を案内したり、アレンジメントのレッスンを実践してきた。今後は、店頭販売できるように事務所にアトリエを設け、レッスンやワークショップなどを開催したり、母の日やクリスマスなどの特別な日には、ポップアップストアとして1日だけ店を開いたりすることを考えている。
もう一つは、バラの少量多品種生産だ。以前は10品種だったバラの生産が、現在は35品種と3倍以上に増えている。作業的には、一つの品種を多く生産する方が楽ではあるが、いつも同じ管理方法で生産していると、うまく作れていると錯覚してしまい、それほど生産量が伸びていないことが多い。しかし多品種を少量ずつ生産すると、各栽培箇所の生産効率を上げようとするので、手間はかかるが、品種ごとの生産量が伸びていく。天野さんは、それぞれの品種の栽培方法を学ぶため、セミナーを受けたり、全国の農家を見学するなど、試行錯誤を繰り返している。
天野さんは、次のように語っている。「父の時代は、大量生産、大量消費であり、同じ品種のバラを大量に作っていればよかったが、今の時代は社会が成熟してきて、どこにでもあるものより、あまり人が持っていないものを欲しがる傾向である。そのため、少量多品種のバラを作り、花持ちのいいバラ、香りのいいバラなど様々なキャラクターのバラを植え、付加価値をつけていきたい。」

バラ生産による6次産業化への3つの展望

天野さんは、豊川市でバラ生産による6次産業化を進める上で、3つの課題を挙げる。
一つ目は、最近の気候変動への対応だ。特に、2020年は夏前に雨が多くて光が入らず、その後すぐに猛暑になりバラの管理が難しかった。病気が流行したり、虫が大量に発生する年もある。天野さんは、日本ばら切り花協会という生産者が集まる団体に所属し、生産者同士で情報共有したり、勉強会に出席するなどして研究を重ね、これらの被害に対応している。
二つ目は、アグリツーリズム。農業見学やアレンジメントレッスンについては先に述べたが、この他、今後は無農薬栽培に取り組み、バラを加工品としてチョコレートやソフトクリーム、化粧品に取り入れることで、カフェやレストランも併設できると考えている。
天野さんは、天野バラ園をお出かけ先の一つとして、地元からだけではなく県外からも来てもらえる場所にしたいと考えているが、農地を確保し建物等を整備するだけでも大きな投資が必要となる。天野さんは、まずは、事務所にアトリエをつくり、小さく始め、実績づくりに力を入れるつもりだ。
三つ目は、バラの小売りだ。天野バラ園では、2020年4月からオンラインストアを始めた。2020年はコロナ禍の影響で、4月の緊急事態宣言から花のマーケットが崩壊した。特に、白いバラは結婚式がなければ需要がなく、通常卸値1本200円のバラが、1本1円になっていたほどだ。天野さんは、それを見てオンライン販売に切り替えたが、市場出荷しかできない農家は大変厳しい状況になった。
オンライン販売の強みはなんといっても鮮度だ。通常、市場に出荷すると、花屋を経由し消費者に届くまでに3~4日程度かかる。しかし、天野バラ園のオンラインストアでは、発送当日もしくは前日に切った花が1日程度で届くのだ。
そして、天野バラ園のオンラインストアでは、香りにこだわっている。また、ピンク系、オレンジ系、白系、黄色系などに分けて、好きな色を選んでもらえるようにした。その結果、コロナ禍で、おうち時間が増えた方のニーズに応えることができた他、自分用だけでなく、贈り物とする注文も増え、バラは人と人とをつなげる一つのアイテムになった。
天野さんの奥様は、東京を中心に店舗を展開する「青山フラワーマーケット」の中で、売り上げ一位の店舗の店長を務めていた。花のレッスンやイベント装飾などはプロの腕前であり、品種の導入についても常に相談できる強力な味方だ。天野さんは生産者目線であるが、奥様はセンスや使いやすさなど消費者目線で見てくれる。オンラインストアは、奥様の出産により一旦中止するが、再開後は奥様が中心となって活動する予定だ。

モニターの皆さんに伝えたい天野さんの想い

今回のモニターの皆さんには、バラには様々な形、香りがあることを知ってもらい、楽しんでいただきたい。そして、バラを作っている生産者としては、植物の効能を知ってもらいたい。バラを見たり香りを嗅いだりすると、集中力が上がったり、肌がきれいになったりすることもある。花を通して、皆さんの時間を豊かにする手伝いができるようであれば嬉しい。モニター商品には、切り花栄養剤とバラの手入れ方法の説明書を同封するので、それを見て生けてもらえれば長持ちする。
天野さんは、現在、全国でバラの消費を拡大するために、いい夫婦の日(11月22日)には「バラを送ろう」という宣伝をしたり、バレンタインではフラワーバレンタインとして、男性から女性に花を贈るなどのマーケットの創出活動をしている。天野さんは小さなアグリツーリズムをスタートする中で、実は男性がすごく楽しんでいることに驚いている。男性はバラに触れる機会はそれほどなく、花屋でしっかりと見るわけでもなく、手に取るわけでもない。そういう人が温室を見て、バラの香りを嗅ぎ比べると、その違いに驚くのだ。日本人は花を贈る習慣がないが、特別な時に気持ちや感謝を伝えるために花を贈るのもいい。花や緑がある生活や職場で心身共に癒され、人間関係も良好になる。
今回のモニターがきっかけとなり、オンラインストアで購入したり、アトリエに足を運んでもらって、天野バラ園のバラに触れる機会があれば嬉しい。

編集後記

インタビュー終了後、天野さんのご厚意で、バラの香りを体験させていただいた。紫のバラは濃厚な香り、白いバラはすっきりとした香りで、同じバラでもこんなに違うのかと驚いた。
そして、天野バラ園の花束を購入し、母と妻にプレゼントした。渡した時はそっけなかったが、その後子供と共に笑い声があふれた。バラは初め、ややつぼんでいたが、1日経つと花が開いた。そして1か月経っても、きれいな花を咲かせている。部屋だけでなく、心もとても豊かに、華やかになると感じた。

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