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茶臼山高原の芝桜【豊根村】

やまエリア 生産者の声

豊根村

山里でブルーベリーの観光農園を経営する6次産業化への挑戦
~自分の田舎と想ってもらえるファンを増やしながら~

豊根村あさがね農園特選品セット生産者:あさがね農園(株式会社ナカヤマE.E.) 代表取締役 長谷川歩さん

愛知県有数のブルーベリーの産地「豊根村」

豊根村は、茶臼山山麓の涼しい気候の中で、自然の恵みを受けた高原作物の栽培が盛んだ。その一つがブルーベリー。ブルーベリーが豊根村の特産品となったのは、昭和60年ごろから地元の農家が長年努力を重ねて取り組んできた成果だ。ブルーベリーは、ラビットアイという温暖な低地で作られる品種とハイブッシュという寒冷な高地で作られる品種の2系統に分かれ、ハイブッシュ系品種はマイナス5度以下の冷気にさらされないと結実が少ない。そこで豊根村では、所有する試験研究園でハイブッシュ系の品種を中心に30種類くらい試験栽培し、地域の気候風土に合って、かつ収量や糖度が優秀なものを農家に普及させた。その後、30年かけて古い木を更新するなど村全体でブルーベリーのおいしさを追求し、今では約30軒の農家が栽培し、県内でも有数なブルーベリーの産地となっている。
低地で作るラビットアイ系の品種は甘味が強いが、ハイブッシュ系の品種は酸味と甘味のバランスが絶妙だ。また、ハイブッシュ系の品種は主に生食向けで、皮が薄く日持ちしないが粒が大きい。この特徴を活かし、豊根村ではブルーベリー摘み取り体験を観光資源として展開し、現在村内では11軒の農園が登録され、多くの観光客を受け入れている。

標高830mの観光農園「あさがね農園」

こうしたブルーベリーの摘み取り体験農園と、ブルーベリーの加工品を生産・販売しているのがあさがね農園だ。あさがね農園は標高830mの山地にあり、約1000本のブルーベリーが植えられている。そのほかに、休憩所としての山小屋、炭焼き小屋、庭園、バーベキュー場、味噌の蔵、キノコの栽培場、山菜採り場などがあり、面積は1町歩(約1万㎡)ほどにもなる。観光農園は6月末~8月中旬までの夏の間だけ開園し、お客様には五平餅や鮎などの地元に関わる料理を提供している。そして、夏以外は観光バス会社と連携したツアーを組みながら、イベントを月数回程度実施するなど、1年を通じて山の自然を活かした様々な体験ができる。

このあさがね農園を経営しているのが、ナカヤマE.E.の代表である長谷川さんだ。ナカヤマE.E.の創業者である長谷川さんの父は、別の建設会社を経営する中で、豊根村に貢献したいという想いを抱いていた。豊根村の山は手入れされていない杉檜が多く、森林保全のためには間伐の事業に携わりたい、そして、豊根村が展開するブルーベリーを特産とした観光農園に一役を担いたいという2つの想いがあった。そこで10年前に、森林整備事業と観光農園を経営するナカヤマE.E.を設立し、自分の建設会社が建設工事で出た残土を埋め立てるために所有していた跡地を活用して「あさがね農園」を開園した。開園当時は残土のため多くのブルーベリーの木が枯れたが、愛知県の栽培士などのアドバイスを得ながら土を変え、3年後にはブルーベリーが収穫できる状態になった。その後、娘の長谷川さんが6年前にナカヤマE.E.を引き継ぎ、現在に至る。

観光農園を経営する「長谷川歩さん」

長谷川さんは、小中学校は豊根村で学び、高校から村外に移住し、現在は豊橋市に居住しながら、豊根村に通勤している。現在、あさがね農園では長谷川さん、女性社員1名、地元のアルバイトの方だけで管理しており、農園にブルーベリーやしいたけなど様々な農産物を栽培して農作業をしている。特にブルーベリーは1000本栽培し、1トンくらいの果実が実るが、ブルーベリーは追熟(収穫後、日が経つにつれ肉質が柔らかくなったり甘くなること)しないので6月下旬~9月中旬の収穫時期に一斉に完熟したものをとる必要がある。その上、ブルーベリーは摘み取りや選果など全て手作業で、とても手間がかかる。
一方、ブルーベリーの摘み取り体験をする観光農園の開園期間は7月1日~8月10日までと、上記の収穫時期に比べ短い。完熟したブルーベリーは、汁が出るため、ハチが寄ってくるのだ。あさがね農園では、ブルーベリーが実る前の春先に女王バチを獲る対策をしているが、それでもハチが寄ってくる可能性がある。ブルーベリー園が休園すると、10月には芋ほり体験やピザ作り体験、11月にはクリスマスのリース作り体験などのイベントを月1回程度開催している。新しい試みは星空観察だ。星空案内人の協力のもと実施している。街明かりのない豊根村では、肉眼でも無数の星を見ることができる。昼のうちは流しソーメンやピザを食べて楽しみ、暗くなるまでワークショップをした後に、星空を観察、最後に花火をするなど、多くの人が楽しんだ。
開園当初は、新城市や豊橋市など東三河地域内の近隣からのお客様が多かったが、今は名古屋や浜松など東三河地域外からのお客様が増えている。長谷川さんは、「ここにきて、田舎を味わってもらうことが重要。仕事を忘れる。風の音、鳥の声だけを楽しんでほしい。」と、豊根村ならではの楽しみ方を提案している。

6次産業化による観光農園の新たな経営展開

長谷川さんは、将来にわたってあさがね農園を運営できるように、現在、二つの6次産業化に挑戦している。
一つは、加工品づくり。あさがね農園では有機栽培にこだわっており、収穫できたブルーベリーを村内の道の駅や温泉などに独自の販路で卸しているほか、収穫したブルーベリーの4割を冷凍でストックし、加工用として商品化している。代表的な加工品は手作りジャムだ。一般的にジャムの砂糖は輸入のグラニュー糖を使うが、あさがね農園では、国産のビートグラニュー糖で作ったこだわりの一品である。とろっとしてやわらかいがヨーグルトと非常に相性がいい。また、ジュレやジュース、シャーベットなども高原のブルーベリーの甘酸っぱさが味わえるよう果汁濃度にこだわって、生産している。こうした加工品をより多く作り、販路を開拓し、ヒット商品を生み出すことが長谷川さんの夢だ。

もう一つは、ファンづくり。あさがね農園では、開園している期間に、お客様の要望を聞き、それに沿うイベントを企画し、手紙を送ったりしている。今年の芋ほり体験イベントは30人の定員を超える応募があり、お客様には芋を2kg持ち帰っていただいた。
あさがね農園の客層は、基本的に年配の方が多く、奥三河に住んでいた人など、ゆかりのある人が多い。毎年立ち寄る方もいて、この農園の商品を買う方も多いが、年齢層が高くなってきており、だんだん訪問が難しくなっている。将来的には、そうした方に、会費制で、この農園でできた農産物をお届けすることなどを考えている。

モニターの皆さんに伝えたい長谷川さんの想い

今回お届けするモニター商品は、あさがね農園で作ったしいたけと、ブルーベリーを加工したジュレとジュースであり、いずれも豊根村を味わえる産品だ。しいたけは、原木から作ったものであり、香りがよく肉厚で、自信の一品だ。豊根村は寒暖の差があり、とてもおいしいしいたけが栽培できる。豊根村では春と秋のしいたけを作っているが、特に春のしいたけは、寒い中ゆっくりと大きくなるので、秋よりおいしく実がしまっている。
一方、ブルーベリーの加工品は、特にジュースは新商品で、まだ村の人にも知られていない。山の本来のブルーベリーの味を味わってほしいという想いから、特に果汁濃度にこだわり、今回は40%としたので、飲んだ感想を聞かせてほしい。次回からは、もっと果汁濃度の高いジュースを商品化したいと考えている。実現したら、ぜひ味わっていただきたい。

そして、豊根の懐かしい味を思い出していただき、豊根村に来る機会があれば、あさがね農園に立ち寄ってもらえると嬉しい。長谷川さんは、「若いころは豊根村出身というのが嫌だった。でも、今になっては田舎があってよかったと思っている。」と語っている。都会で育ち、都会に住む人お客様の中には、田舎をうらやましいという方もいる。そういう方には、ここをあなたの田舎と思って毎年来て欲しいと伝えている。そして、今では、安城市から子供を連れて毎年ここにきてくれる方など、少しづつファンを増やしている。
長谷川さんは豊根村の出身であるが、それでも開園当初は地域に溶け込むことの難しさを感じていた。豊根村のファンを増やすには、地域の外からの視点と、内からの視点のいずれも必要だ。両方の視点を持つ長谷川さんが経営するあさがね農園を通じて、豊根村を自分の田舎と思ってもらえるファンが一人でも増えると嬉しい。

編集後記

後日、このインタビューの時に買ってきた、あさがね農園のブルーベリージュレ、ジュース、ジャム、原木しいたけの、豊根村の食材をいっぱい使った朝食を家族でいただいた。
ジュレは甘酸っぱく、喉越しがよくおいしい。ジュースはワイン風味があり、後味がすっきりしている。原木しいたけは肉厚で、豊かな味がして、豊根村の高原の風情を思い出した。そして手作りのジャムは、ブルーベリー本来の味がして、粒も大きく食べ応えがあり、子供もおいしそうに食べていた。豊根村の豊かな自然や人の温かさを話しながらの楽しい朝食となった。いずれ家族を連れてあさがね農園に遊びに行こう。

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