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茶臼山高原の芝桜【豊根村】

やまエリア 事業者の声

豊根村

50年間村外不出の逸品で地域活性化を
~パンチが効いた伝統の味に自信~

道の駅豊根グリーンポート宮嶋「山里のおくりもの」事業者:株式会社Rev.とよね(リヴとよね) 代表取締役社長 胡桃(くるみ)珠音(みお)さん

行事でも食卓でも愛される村の定番

愛知県下最高峰の茶臼山(標高1415メートル)をはじめ多くの峰々が連なる豊根村。森と清流に恵まれた山村ならではの食文化が育まれてきた。しおくりん商品として同村から送られる「山里のおくりもの」セットには、木の実を練り込んだ素朴な餅菓子、川魚の甘露煮など地元の逸品がそろっている。
そんな品々の中から今回紹介するのは、誕生してから50年もの間、村外不出だったという「味つけ廃鶏」だ。しょうゆとみそで調えたタレに鶏肉を漬けてある。花見などのイベントで村民が集まれば、この肉を焼きながら酒を飲むのが定番だという。家族が集う盆・正月や、もちろん日常の食事でもなじみの一品として愛されている。
豊根のソウルフードともいえる食品だが、過疎が進んで村内の作り手は残り1軒となってしまった。最後の1軒に縁あって嫁いだのが、名古屋市出身の胡桃珠音さんだ。この伝統の味を村外へ広く売り込み、地域のファンも増やしていこうと奮闘する胡桃さんに話を聞いた。

若鶏にはない独特のうま味

「味付けした鶏肉は奥三河地域の文化です。以前は牛肉や豚肉がなかなか手に入らず、庭で飼っているニワトリが卵を産まなくなると食用にしていたそうです。豊根村では約50年前、夫の祖母がタレに漬けた商品を作り始めました」
風味について、胡桃さんは「当初から独自の調味液を使っており、今もほとんど変えずに受け継いでいます。ポイントはニンニクが効いていること。奥三河でも一番パンチのある味だと思います」と胸を張る。

商品名でうたわれる「廃鶏」とは、採卵を終えた雌鶏のことだ。家庭でニワトリを飼わなくなってずいぶん経つが、今でもあえて廃鶏を材料として仕入れてくる。
理由は独特の味わいにある。「ブランド鶏を使っているわけではないのに、お客さまからは『地鶏みたいなうま味と歯応えだった』という感想をいただく。産卵を終えたニワトリは、卵ではなく自分の身体に栄養を蓄えるからかもしれない」
高齢者や子供でも口にしやすいよう、やわらかな若鶏の味付け肉も用意しているものの、うま味の強さは廃鶏にかなわない。
そんな魅力的な食品なのだが、数少ない生産者がそれぞれ手作業で生産してきたため、地域外の人には知られていない隠れた名物であり続けた。胡桃さんの扱う商品も長年、夫の実家が商う食料品店でしか買えない「村外不出」の品だったのだ。

最大火力でおいしく炒めて

味つけ廃鶏は冷凍パックで販売されている。タレがしっかりしみており、解凍してフライパンで炒めるだけで手軽に食べられる。
胡桃さんのお勧めは、他に具材を加えずパックの中身だけ調理する方法だ。商品裏面にも丁寧な説明書きがあるが、おいしく炒めるコツを聞いてみた。
「肉から出てくる水分を、強い火力で飛ばすことが大事です。そうすれば中までしっかり熱が通り、外はカリッとした食感が出ます。家庭用コンロなら最初から最後まで最大火力を使ってほしい」

実際に炒めてみると、結構な量の肉汁が出る。素人目には、既に熱が通ったように思えるのだが、ここで火を止めてはいけない。
「水分が残ったまま調理を終えると、肉は硬くなってしまいます。しっかり水分を飛ばすとキツネ色の油だけ残るので、その油で肉の表面に軽く焦げ目をつけてください」
フライパンにしみ出した肉汁はタレと混じって茶色に見える。ところが、焦らず加熱を続けると急に透き通り、キツネ色に早変わりする。これが水の飛んだサインで、見逃すことはないだろう。
また、炭火ならさらにおいしく仕上がるそうだ。冷凍パックはクーラーボックスの中で保冷剤代わりにもなるから、野外でのバーベキューにはもってこいだろう。
ただし網焼きは厳禁だ。「絶対に鉄板で焼いてください。網だとタレもうまみも全部落ちてしまうので、うちの味付け肉は鉄板オンリーです」とのこと。くれぐれも気を付けてほしい。

村民みな親戚、豪快さが気持ちいい

今年25歳になる胡桃さんは名古屋市で生まれ育った。東京の短大を卒業し、地域おこし協力隊として豊根村へやってきた。
都会育ちの胡桃さんの目に村はどう映ったのか。「豊根のよいところは人です。空気もいいし景色もいいけど、それ以上に村の人たちが豪快なのが、気持ちいい。村民同士のつながりが強く、みんなが家族、親戚だといってもオーバーとは思いません」
一度は名古屋に帰ったが、協力隊を務めていたころに付き合い始めた夫と結婚し、村へ戻ってきた。
胡桃さんが味つけ廃鶏の売り出しに本格的に取り組むのようになったのは、2021年4月からだ。村の人口は1000人強。長く親しまれた食品とはいえ村内で売るだけではいつか消滅してしまうとの危機感から、まずはクラウドファンディング(CF)を活用して応援購入を呼び掛けた。
CFのウェブサイトでは味自慢をするだけでなく、「村外不出、伝統の味」「ひっそりと受けつがれ愛される」と希少性を訴えた。土地に根差した食品だと強調する作戦は大当たり。全国から購入申し込みが相次ぎ、新聞やテレビにも取り上げられた。
また、村内の道の駅「豊根グリーンポート宮嶋」などへの出荷を開始。メディアに出た効果は大きく、遠方から購入客が訪れるようになった。インターネット通販へも注文は相次ぎ、今は生産が追い付かないほどだ。

通販きっかけに、小さな村の存在を知って

販売を通じて胡桃さんが期待しているのは、村の知名度向上だ。ネット通販での発送時には村の観光パンフレットを添えており、それをきっかけに地域へ関心を寄せてくれる購入者は少なくない。「遠いから通販で買ったのに、パンフレットを見て行きたくなり、実際に村まで行っちゃいました」という人もおり、こうした反響が日々の励みになっているそうだ。
「食べていただく皆さんには『こんな小さな村に、こんな商品があるのか』と感じ、周りの人に伝えてもらいたい。くちコミの力で広まることが、豊根の活性化につながるはず」
胡桃さんは21年7月に自ら設立した会社「Rev.とよね」の名称にも、「revitalize」(活性化する)との目標を反映させた。今後は食品販売にとどまらず、空き家を活用するなどして村外の人を招き入れるような事業を展開していく考えだ。
今回、豊根村のしおくりん商品をご注文いただく方々には、伝統の食品を作り続けてきた人々、そして若き女性経営者の挑戦に思いをはせながら、特産物を食べてもらえるとうれしい。いっそう味わい深くなるのではないだろうか。

編集後記

道の駅豊根グリーンポート宮嶋の代表、石田いまさんにインタビューをした。
「味つけ廃鶏」は、道の駅では売店で多くのお客さまにご購入いただいたり、レストランでも「廃鶏定食」として好評だ。定食では野菜も一緒のフライパンで炒めるが、同じように調理する場合は、まず廃鶏だけ強火で焦げ目がつくまで焼くのがポイント。キャベツやニンジンはその後に入れてほしい。

豊根村では、昔からお祭りや運動会の後にみんなで焼き肉をする習慣があり、各家庭では外で食べる焼肉セットを持っている。そこで重宝されているのが「廃鶏」であり、村のソウルフードだ。
石田さんから皆様に一言。「今回の『山里のおくりもの』は、豊根村の昔ながらの食材セットです。廃鶏だけでなく、鮎の甘露煮も昔お茶漬けで食べたり、栃もち+手作りあんこもおしることして食べていた。そうした昔ながらの食べ方をレシピに書いてしおくり商品と一緒に送るので、昔からの食べ方で豊根のソウルフードを味わって楽しんでほしい。まさに故郷の味、新鮮です」

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