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竹島【蒲郡市】

うみエリア 生産者の声

蒲郡市

伝統手法「クドのお釜」で作る蒲郡特産の佃煮「三河の心づくし」
~「うみの味」と「うみの癒し」を求め、見つけ、伝えて~

三河の心づくし生産者:カネリ尾﨑食品有限会社 代表取締役 尾﨑圭司さん

蒲郡の「うみの味」を受け継いだ佃煮

蒲郡の特産品は「メヒカリ」「ニギス」といった深海魚だ。西浦、形原、幡豆などの三河湾沿岸の漁港から水揚げされており、特に「メヒカリ」は、昭和30年代から大量に漁獲されていた。この頃の佃煮はハゼが主流であったが、取れる量が減ってきたため、東三河の佃煮屋が研究して、「メヒカリ」をハゼの代わりに商品化したのが始まりである。こうした蒲郡特産の海産物を使った佃煮を、創業(昭和33年)当時の手法で生産しているのが、カネリ尾﨑食品の尾﨑さんだ。魚を天日干しし、炭で焼いた後、「クドのお釜」で煮て味付けをする伝統の手法を受け継いでいる。

まず天日干しの作業。気温や湿度も関係し、天気がいい日でないとできない。夏の暑い時は湿度も高く魚が乾かないので、時期的には、秋口が一番いい。
次に炭で焼く作業。ガスと違い、焼く際に水蒸気が発生しないため、ふっくら、こんがりした焼き上がりになる。しかし炭はコストがかかる。夏は、温度が50度以上になるため、室内が非常に暑く、作業は過酷である。

そして、「クドのお窯」で煮る作業。豊かな海産物を誇る蒲郡では、かつては多くの佃煮屋が「クドのお窯」を使用していた。しかし、現在、「クドのお窯」は東三河地域で見てもカネリ尾﨑食品にしかない。
味付けの元となる煮汁には、煮るたびに魚の旨味が蓄積される。煮る時は、最初に醤油、砂糖等の調味料を入れて、煮詰めるにしたがって煮汁を追加して味を濃くしていく。特に「メヒカリ」などの煮汁は、創業当時からの継ぎ足しであり、これまでの蒲郡の「うみの味」の歴史が詰まった財産だ。

伝統の「うみの味」を守り続ける「尾﨑圭司さん」の挑戦

カネリ尾﨑食品の創業者である尾﨑さんの父親は、13歳の時に父(尾﨑さんの祖父)を亡くしている。父親は、当時愛知県豊橋中学校(現時習館高等学校)の学生であったが、卒業せずに漁師として働くことになった。しかし、漁師は危険な職業であったため、母(尾﨑さんの祖母)が心配し、蒲郡でアサリを中心とした老舗の佃煮屋(現在は廃業)に修行に行かせ、その後現在地で起業した。創業当時は、アサリや小魚などが豊富にあり、原料に困ることはなったため、そういった海産物を仕入れて、東京や九州の炭坑の町でたくさん売っていた。
しかし創業者である父親が、尾崎さんが11歳の時に亡くなり、問屋などの顧客も他の佃煮屋に移っていった。その時、母親から「あなたはどうしたい。」と聞かれたが、当時億万長者ゲームで商売に夢中だった尾﨑さんの答えは、「佃煮屋をやりたい。」だった。そこで、まずは母親が佃煮屋を継ぐことになった。佃煮屋は母親が一人で経営できるものではなかったが、尾﨑さんが周囲の人とも相談し、小売りを始めた結果、思いのほかお客が来てくれて、子どもながらに商売の才覚の芽をだしていた。
そして、尾﨑さんが24歳の時、佃煮屋を継いだ。当時は他のギフトも多種多様となり、佃煮は売れなくなっていた。そんな時、一色町(現西尾市)にオープンする一色さかな広場のテナントにならないかと誘われた。いろいろなところを視察し、考えた結果、佃煮以外の商品も売ることができるように取引し、一色さかな広場で支店を出すことにした。
一方、本店では、佃煮の商品開発を進めた。「ニギス」は、商品化して10年の新しい商品である。「ニギス」は、煮込むと身が固くなりやすく、仕入れ値も比較的高値であるため、このあたりではカネリ尾﨑食品しか佃煮として製造していない。「ニギス」の水揚げが少ない時は、休売中になることもある。
また、蒲郡の特産であるミカンを使った「アサリ」の佃煮の商品開発にも取り組んだ。これは、蒲郡6次産業研究所の所長から相談を持ち掛けられ、4年間の試行錯誤を重ね、2017年に商品化したものだ。パッケージやネーミング「蒲郡からのおすそわけ」も尾﨑さんのご子息の薦めで、蒲郡市西浦町出身の静岡大学の女子学生のデザインを採用するなど、地元の想いが詰まっている。
実は、佃煮屋を継ぐ前に、母親との折り合いが悪くなり、豊橋市で喫茶店を経営したが、1年半で廃業したことがある。「母親からは「商売を甘くみている。」と言われたが、若いころにやった経験・体感したことは今の自分にも役に立っている。やりたいことを実行する瞬間が早ければ早いほどいい。失敗したら失敗したことをまた1つの要素にして次の何かの機会の参考にすればいい。」と尾崎さんは言う。

生産者を支えるファンの声

現在、蒲郡市内で佃煮専業として残っている会社はカネリ尾﨑食品のみである。尾﨑さんは、蒲郡市で唯一佃煮専業を続けることができた理由を3つ挙げた。
一つめは、経営の維持。資金繰りが苦しくなり、ある銀行に融資を依頼したことがある。その際、干物を売るためのオープン冷蔵ショーケースを買う資金30万円なら貸すと言われた。来店のお客の少ない西浦の店で、賞味期限の短い干物を売るなどといった話には乗れないと断ったが、資金管理、在庫管理等の見える化の必要性を痛感し、毎日従業員に在庫管理をさせてきたことが、経営を維持する一助になっている。
二つめは、企業努力の精神。昔は、ふんだんに原料があり、自分たちで好きに魚を選べたが、そういう時代ではなくなった。佃煮は手をかけるためあまり高い魚は買えないこと、鮮度の落ちる魚では絶対いい製品はできないことから、手ごろな値段で鮮度のいい魚でないと商売として成り立たない。しかし、魚は自然相手で、獲れる時もあれば獲れない時もある。また、カネリ尾﨑食品はキャパが小さく大量に仕入れないため、思うような魚の仕入れができない。「メヒカリ」は、漁獲量が少なくなったことに加え、新たな食べ方の開発(唐揚げ)によって、最近高値になり、佃煮の原料としては難しくなっている。流通コストも高くなっており、同じ製品であっても、流通の段階で出荷のコストが増えて値段が上がっている。生産者側は、いかに合理的に同じ品質の製品を提供するかを徹底的に考えている。
最後は、お客の信用の継続。利益に集中するより、買ってくれるお客の信用を裏切らないことが重要である。例えば、一色さかな広場で篠島のちりめんを20年以上売っているが、そのちりめんが非常にうまく、固定客がつくなどお客が増えている。その時に、「あんたのちりめんが一番うまい。」と言ってくれた時は感動する。佃煮でも「今まで食べていた佃煮の中で一番おいしい。」と言ってもらえるファン層がついている。平成30年にテレビに出た時に、反響で品切れになり固定客に待ってもらうことになった。「テレビなんかやってくれないほうがいい。佃煮が買えなくなってどうしてくれる。」という声もいただいた。そういうお客との関係は今でも続いており、生産者にとっては、そういう声が一番モチベーションになる。また、零細企業だからこそ人のつながりが重要である。パソコンの画面越しより、その場で空気を感じ、音を感じ、温度・気温・雰囲気を感じる対面の商売が大事なことと感じている。

モニターの皆さんに伝えたい尾﨑さんの想い

今回のモニター商品は、蒲郡特産の「メヒカリ」、「ニギス」のほかに、「サンマ」、「イワシ」、「アサリ」などの佃煮の詰め合わせである。尾﨑さんは、試食販売の際、すし飯にのりを巻いて(軍艦)、その上にマヨネーズを少しつけて「イワシ」の佃煮を乗せた試食品を提供している。そして、ご家庭なら、手巻き寿司がよいと勧めている。また、食パンにからしマヨネーズをつけて、「メヒカリ」「ニギス」を乗せて食べるとおいしい。からしマヨネーズがぴりりとし、甘辛さが照り焼き風になり、サンドイッチにすると良く合う。
カネリ尾﨑食品のファンは、魚の好きな人で、年齢層は比較的高く、60代後半が多い。「イワシ」などを買う人は健康面や栄養面を重視している。一方で、佃煮という食材が今日の若い世代の家庭では、メニューの一つに加わらなくなっている。若い人にもっと佃煮を食べていただけるよう、商品の食べ方を研究していきたい。普通にご飯にのせるだけでおいしいという意見も大事であるが、佃煮をどうやって食べるとおいしくなるのかを知りたい。そして、自分で作った商品を、こうして食べたらおいしかったというコメントがあるとうれしいし、そうした声は生産者冥利につきる。佃煮も、皆それぞれの食べ方があるので、それを皆で情報交換していければ、蒲郡の地元産品の応援にもつながる。
そして、蒲郡の海を見に来てほしい。海の良さは「癒し」だ。海は毎日顔が違う。風のある日、晴れている日、干潮満潮の違い、気温による違いなどいろんな顔を持っている。そういう変化が海の魅力であり、その魅力が「癒し」になる。
お客との生のふれあいが大事と述べたが、海も生のふれあいだが大事だ。気温や匂いはその場で感じるものだ。スマホやパソコンで皆が同じ海を見るのではなく、それぞれが違う海を見てもらうのがいい。人間は常に変化して、その変化になにかを見つける機会を得ている。「その日の海」に出会えるのは、そこにいった人の特権だと思う。モニターの皆さんには、今回の商品を食べていただき、そういう蒲郡の海を振り返って海の懐かしさを感じてほしい。
子供には、「大きくなった時に注視するキーワードは「ギャップ」である。」と教えている。昔、子供は創意工夫で遊べる機会があったが、今は与えられた物で遊ぶことが多いのではないか。決められた遊びではない「体験」が、子供の成長を育む。自分の地元の街の魅力が答えられない人が多いと思うが、これは海も山も同じで、「ギャップ」を求め、見つけ、伝えることで、それを機会に地域が変わるのではないか。例えば、今日の西浦半島の松島の風景などを、ピンポイントで伝えるのも面白い。これまで発信されている蒲郡の海は同じロケーションが多いが、蒲郡だから見えるいろんな海の顔があり、それぞれの想いや感性で見える顔がある。モニターの皆さんも、常には海を意識する生活からは離れていると思うが、これを機会にそれぞれの想いをもう一度掘り起こして伝えていただければうれしい。

編集後記

インタビュー後、尾﨑さんの「メヒカリ」の佃煮を買って食べてみた。味は少し濃いが、かむと甘みがでてとろける。お酒を飲む人には合うと思う。また、この濃いめで大人の味を、薄味にして子供のおやつにすれば、健康にもいいと思った。

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