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手筒花火(炎の祭典)【豊橋市】

まちエリア 事業者の声

豊橋市

豊橋伝統の果物を受け継ぎ、さらなる高みを目指す「次郎柿」
~生産農家の高い技術、知恵と将来への想いを込めて~

豊橋特産の次郎柿事業者:JA豊橋柿部会 印貢(おしずみ)大起さん

豊橋の果物の代表「次郎柿」

次郎柿は、豊橋の果物の代表だ。50歳以上であれば幼少の頃に食べていた人が多いだろう。柿の種類は多く、実は、全国の柿の半分以上は渋柿なのだ。それに対し、次郎柿は種の有無に関係なく渋が抜ける完全甘柿だ。
次郎柿は品種の中では一番作りにくく、年によって実るときと実らない時がある。なるべく実るように、早めに摘蕾と摘果をするのがコツだ。露地栽培は、5月頭に摘蕾、6月中旬から8月末までに摘果する。ハウス栽培は2月中旬から3月末に摘蕾、4月から7月に摘果。特に露地栽培は摘蕾と摘果を多く行い、手をかけておいしい柿をより多く収穫することがポイントだ。
JA豊橋柿部会の生産者は令和2年度で349名であり、そのうち348名の農家が次郎柿を生産している。そのほかに、西村、早秋、愛秋豊、富有、陽豊などの品種も生産しているが、生産面積をみても全体の226haのうち、198ha(88%)が次郎柿の農園であるなど、豊橋の次郎柿は今でも柿農家の主力商品だ。

豊橋市産「次郎柿」の発祥

豊橋の次郎柿の今日のブランドを作ったのは、先代の柿農家が長い間関東市場でPRしたり、売り場での試食会などを積み上げてきた成果だ。豊橋の次郎柿の農家は、養蚕を営んでいた農家などが、景気の悪化を機に、昭和30年代に柿農家に変わっていったものだ。もともとは、静岡県森町にあった11月ごろに収穫できる普通次郎柿の枝変わり(品種改良)の品種として、10月中旬から収穫できる早生次郎柿が豊橋を中心に広まったことが由来である。
当時、名古屋市場には岐阜県の柿が、関西市場には奈良県、和歌山県の柿が出荷されていた。そこで、豊橋の柿農家は関東市場を狙い、豊橋市、豊川市、新城市の農家が共同して東三河果樹組合を作り、豊橋市と新城市に共同の青果場を作って出荷した。このように、東三河果樹組合の青果場ができる以前から、個人農家がJR貨物で豊橋駅から柿を出荷していた。次郎柿は、関東市場では果物が少なかったこともあり市場に信用された。さらに東三河果樹組合設立後、産地としてある程度の数量を揃えたことが奏功し、豊橋の次郎柿がブランドになった。しかし、農家だけでは東三河果樹組合の運営が難しくなり、15年前に新城市の青果場はJA愛知東、豊橋市の青果場はJA豊橋に移行して現在に至る。

豊橋市下条東町で次郎柿を生産する「印貢大起さん」

JA豊橋柿部会に所属する柿農家の印貢さんは、露地栽培の柿農園を162a、ハウス栽培の柿農園を3棟45a所有し、現在、年間約6万個を出荷している。印貢さんは、柿農家の生まれだ。大学では経済学部に所属し、流通業界に興味をもち、卒業後は東海地域を中心とするスーパーに入社したが、40歳で退職し実家の柿農家を継ぐ決意をした。
印貢さんの農園では、40年前からハウス栽培を開始するなど、豊橋でも早くから柿を生産していた。ハウス栽培を始めた頃は、日本の経済が右肩上がりで景気が良く、さらにお中元の時期に出荷できたため、高い価格で面白いように売れていた。また、ハウス栽培での収獲は8月末から10月中旬までであり、その後露地の収穫が11月中旬までと、ハウス栽培と露地栽培では収穫の繁忙期が分かれるため、年間を通じてなるべくフラットな状態で集荷できることもメリットであった。しかし、徐々に柿の単価が下がり、果物専門店からスーパーに商品が流れるようになった。
印貢さんも同様の環境下にあり、経営を改善するため、ハウス栽培を1棟、露地栽培を当初の倍の面積に増やしていった。

豊橋伝統の「次郎柿」を守るために

印貢さんは、今後、豊橋で次郎柿の生産を続ける上での、4つの課題を挙げている。
一つめに、設備投資。昔は小規模でも単価が高く経営が成り立っていたが、今は単価が下がったため、規模を拡大して収量を増やしている。規模の拡大には設備投資が不可欠だ。特にハウス栽培は、コストの割に単価が高くないため、昔は豊橋では10数名いたハウス栽培農家が、今は5名しかいない。
二つめに、柿の生産環境の変化。次郎柿は温度差がないと着色が進みにくい特徴をもつが、昨今の気候変動で柿の生産環境が悪くなっている。また露地栽培は、カラス、しか、いのしし、はくびしんなどの鳥獣害被害の問題が大きい。
三つめに、農園の周辺環境。印貢さんの農園の周りでも家が建ち、消毒などができなくなっている。また街灯は害虫を寄せる。周りが果樹ばかりならよいが、市街化の進んだ豊橋では、新しく柿農家として就農することが考えにくくなっている。
最後に、後継者問題。50代以下の若い柿農家は数えるほどである。柿の単価が上がらないので、収益の少ない農家が多く、生産者は減っている。
「豊橋の次郎柿のブランドを守るには、若い人が少数精鋭でいくしかない。」印貢さんはそう考えている。作り方、肥料の仕方、消毒の仕方などいいものを作る人はなにかが違う。いいものを高く売ることを目指す時代、生産方法の研究も欠かせない。
これらの課題を抱えながらも、伝統を守るため、現在、JA豊橋では新たな担い手として期待される新規就農者や定年就農者(定年帰農者)を対象とした「豊橋かき塾」を開催している。

モニターの皆さんに伝えたい印貢さんの想い

今回のモニター商品は、露地栽培の次郎柿をお届けする。JA豊橋柿部会の農家が手間暇かけて作った最高品質だ。
消費者の嗜好は、やわらかい柿(渋柿)と固い柿(次郎柿)で二極化している。冒頭で50歳以上の方はよく次郎柿を食べていると述べたが、実は固い柿は若い人のほうが嗜好がよく、もっと若い人にPRしないといけないと思っている。新しいファンを増やすためにぜひ若い人に食べていただきたい。
次郎柿は、買ってすぐ冷蔵庫で冷やすと日持ちはするが、おいしくはならない。常温で1~2日おいて、食べる前に冷やすとおいしいので試してほしい。そして、次郎柿の食べ方について、そのまま食べる以外の方法があれば、発信していただきたい。
東三河では、柿は買うものではなく、貰うものというイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし今、柿農家は手をかけて一所懸命になって生産している。東京市場では次郎柿はイオンやスーパーなどで売られているので、今回のモニター商品で故郷の味を思い出していただき、買い物の際、目に入ったら応援していただければうれしい。

編集後記

インタビュー後、印貢さんのご厚意で試食させていただいた。最初は固くてあっさりとした触感であったが、噛むと甘みがでてとてもおいしい。冷やすとおいしさが分かると思う。個人的にはシャーベットみたいにするともっとおいしいかもしれないと感じた。

しおくりん東三河

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