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茶臼山高原の芝桜【豊根村】

やまエリア 生産者の声

東栄町

清流「振草川」にある豊富な自然資源で育つ全国一級品の「天然鮎」
~振草川の水と周りの森林や自然環境を見守りながら~

振草川天然鮎生産者:振草川漁業協同組合 組合長 和合(わごう)克美さん

一級品の香り「振草川天然鮎」

鮎は全国各地にあるが、振草川の鮎は特に香りが一級品だ。毎年、高知県友釣連盟が主催する「清流めぐり利き鮎会」では、全国の河川で釣れた鮎の食べ比べ審査をしており、振草川鮎は平成29年にグランプリを受賞している。匂いがいい理由は、餌となる川の藻がいいからだ。きれいな川ほどいい藻が生えるのだ。また、振草川は岩盤が多く、鮎の腹にほとんど小砂利が入っていないことも特徴だ。振草川の鮎は腹も含めてすべて食べられる。岐阜県木曽川水系の和良川の鮎は、何回もグランプリを取っており、京都の料亭などにも出すなどブランド品であるが、振草川の鮎の方がおいしいという声もあるほどだ。
振草川は天竜川の支流の河川であり、昭和40年代までは鮎が遡上していた。鮎は、秋の産卵時期になると河川を下り、下流域で産卵する。そして生まれた稚魚は、一度海に出てから3ヵ月くらいで川に上り、上流域で大きくなるという習性をもつ。こうした振草川の漁場を持つ振草川漁業協同組合は、明治36年に東西薗目漁業組合が愛知県で初の河川専用漁業権を取得し、設立されたのが始まりだ。振草川の漁業の記録は江戸時代にさかのぼり、寛政10年(1795年)の販売記録や文化11年(1814年)の宿泊記録に「鮎」の文字がある。昭和12年(1937年)にはすでに東京築地市場への出荷の記録があり、20年前までは東京まで出荷していたなど、振草川の鮎は全国的にも古くから有名だ。
振草川の鮎釣りの解禁は5月中旬から10月中旬で、釣り客へ販売する遊漁券は、現在、年間年券で300人、一日券で1,000人ほどの人が購入している。特に年券の購入は昔からのリピーターが多い。浜松からのお客が多いが、東京や名古屋など遠方からも来ている。香りのよい振草川の鮎が人をひきつけるのだ。

大きな課題

このように振草川の鮎は一級品として親しまれている。しかし、時代の変化とともに多くの課題を抱えているのも実状だ。昔は、鮎のほかに、多様な雑魚(うぐい、あぐらはい、ほいかわ等)が住み着いていたが、天竜川に、船明ダム、秋葉ダムができ、鮎が遡上しなくなった。現在は鮎を放流しているが、それでもすぐに魚がいなくなる。その原因は主に山林の変化によるところが大きい。
従来、山は雑木もあり水を保つ機能があったことから、川にはある程度の水が常にあった。しかし、戦後、植林した杉や檜の山では、雨が降ればすぐに水を流してしまう。川の水量は、雨に大きく左右されてしまうのだ。また、鮎の餌となる川の藻が、渇水や泥水などで少なくなっている。ある程度、一定の水温・水量が保たれ、きれいな環境を維持しないと藻が育たない。日の当たるところに藻ができ、日のあたらないところは藻が腐る。杉や檜が河川に被さっており、日陰が多くなると、日が当たらず藻が育たない。鮎は新しい藻を食べるが、餌がなければ鮎はすぐに移動してしまう。
また、鮎はとも釣りが基本であり、おとりを使う。鮎はなわばり意識が強く、他の鮎がくると攻撃する習性を利用する。そのため、闘争心の強い鮎が育つことが重要だ。しかし、放流前に池で育てられた養殖の鮎は、餌が人工的に与えられるため、放流後すぐには自然の餌を食べられない。自然に野性的に育てないと、すぐに下流に降りてしまったり、カワウなどの鳥にも食べられてしまい、釣れる鮎が少なくなってしまう。
さらに、全国の一次産業が同じように悩む高齢化や跡継ぎの問題も重くのしかかる。東栄町の住民はもともと林業で生計を立てていたが、夏場は林業ができないため、その時期の収入源として漁業を行っていた。組合員は、15年前は600人いたが、今では半分以下の250人と減少。組合は地元住民のみが入会できるが、高齢化が進み組合をやめる人が多い。30年前は、町で鮎釣りをしない家はなかったが、今は数人程度になってしまった。また、一般の釣り客も、昔は釣り客へ販売する遊漁券だけで組合は黒字だったほどであるが、今は川離れが進んでいる。

振草川天然鮎を守る組合長「和合克美さん」

このような状況に強い危機感を持ち、具体的な対策に取り組んでいるのが振草川漁業協同組合組合長の和合克美さんだ。
釣り客を増やすには何をすべきか。和合さんは考える。まず一つは、釣れる魚の放流。釣り客は情報に敏感だ。釣れないとなると来ていただけない。愛知県で生産する鮎はなかなか闘争心のある鮎ではないため、闘争心のある琵琶湖の湖産を放流して、釣れる魚を増やしている。
二つめは、魚を育てること。鮎の成育には、水量、水温が左右する。例えば豊根村の大入川のダムの水を放流すると、水温が5度ほど違うため、鮎も冷水病などの病気になる。理想的な生息環境は一朝一夕ではできないが、一つひとつの原因を考え、向き合い始めている。
三つめは、漁業協同組合の維持だ。鮎を買う権利も組合に認められているもので、組合が無ければ買うことができない。和合さんは組合の実状を率直に伝え、観光資源として東栄町役場や商工会からの支援を受ける道をつくった。あわせて、組合員の若返り、世代交代を進めていくことも町全体の課題になっている、
四つめは、一般の釣り客を増やすこと。特に若い釣り人が少ない。組合では、30歳以下と女性は半額(年券と一日券があり、年券では組合員8,000円、一般14,000円、女性・30歳以下7,000円)で販売し、おもいきって18歳以下は無料とした。
これらの和合さんの危機感、想いを受けて、地元住民5名からなる振草川鮎釣同好会が立ち上がった。まだまだ課題は大きいと和合さんは語りながらも、一筋の光が見え始めている。

モニターの皆さんに伝えたい和合さんの想い

今回のモニター商品の若鮎は、今年の解禁後(5月16日)から1か月間の間に釣った生きた鮎を氷で絞めて真空パックにしたものである。一概にはいえないが、20cm以上の大きい鮎より19cm以下の若鮎のほうが頭からすべて食べられ、味も一番おいしい。フライもおいしいが、定番の塩焼きが一番よい。解凍したその日に食べるのがお勧めで、鮎そのものの味が味わえる。もし購入いただけるのであれば、東栄町商工会(TEL0536-76-0530)に連絡していただければと思う。また、東栄町では振草川の天然鮎を食べれる飲食店が5店舗くらいある。遠くから食べに来るファンが多く、JAの直売所でお土産で鮎を買っていく人もいるので、ぜひ東栄町の鮎を食べにきてほしい。名古屋、豊田、四日市など東海地方の飲食店5店舗へも天然鮎を送っているので、機会があれば食べてほしい。
そして、なによりも振草川に携わってもらいたいし応援してもらいたい。町外の方を対象とした准組合員をつくり、河川清掃など手伝ってもらえる人が増えれば助かると思っている。河川清掃は、4月下旬から毎月1回(年6回ほど)行っており、年2回は町民ボランティアを募って行っているが、残りの4回は役員8名で行っている。地元出身者が川の環境を守るために関わりを持って助けてくれるとありがたい。今年は東栄中学校で川の清掃をしてくれた。このようにもっと若い人に川に携わってもらいたい。

また、振草川で釣りをして楽しんでもらいたい。釣りを教えてほしい場合は、東栄町商工会に連絡してほしい。同好会が指導する。6月に地元の小学生と東三河の小学生を対象に釣り教室を行うが、指導員が少なく断る場合もある。指導員がいれば、たくさんの子供や若い人に体験してもらえるため、教える側として地域に関わってもらえるとうれしい。

編集後記

東栄町で振草川天然鮎の料理を提供している「山のれすとらん さかた」坂田さんご夫婦にインタビューをさせていただいた。
坂田さんご夫婦は、二人とも豊橋市出身だが、ご主人の両親は東栄町出身。名古屋の店で修行し、25年前、29歳の時に東栄町にある祖父母の家を取り壊して、店をオープンした。東栄町に移住して、自然が豊かで、食材にも恵まれていることに気づき、地元の「振草川鮎」と地鶏「錦爽鶏」の二本柱の料理を中心に提供している。
「振草川の鮎は、いろんな方からおいしいと言われている。振草川天然鮎は普通の魚と違って香りを楽しむものであり、塩は本体にはあまりつけずに、ひれだけにつける。板前の焼き方の基本は、表6割、裏4割。私は、串刺しにした鮎を、強火で火から15cmくらい離した状態で、表3分、裏2分焼いている。焼き具合は、皮がパリッと茶色になるくらいの焼き加減にするのがコツだ。魚の皮が破れずに焼けていると、魚の中で「グツグツ」と水分が煮えているため、軽く人差し指と親指で鮎を摘み、両指に「グツグツ感」があれば鮎が焼けたと判断している。」と坂田さんは言う。
また、店の前には振草川が流れ、対岸には桜並木があり、きれいな星空が年間を通じてみられる。そのため、坂田さんは、10年前から東栄町の自然に魅せられ、趣味の写真が高じて、東栄町の自然のポストカードを作成・販売している。町外の人を呼んで、蛍や桜のイベントなどを独自に開催している。昨年からは東栄町観光まちづくり協会と協働している。
後日、坂田さんからコメントをいただいたので紹介したい。「東栄町に移り住んで25年になります。今では東栄町の自然の中で暮らせていることが楽しくて仕方ありません。美味しい食材に美味しい空気。この場所に住んで初めて朝一番に玄関を開けて深呼吸したい!胸いっぱいに綺麗な空気を吸いたいと思いました。皆さんにもそんな体感をして頂けたら幸いです。」

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