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茶臼山高原の芝桜【豊根村】

やまエリア 生産者の声

設楽町

段戸山麓「駒ヶ原高原」の大自然で育てられ、地域住民の愛情と想いが詰まった「段戸牛」
~「本物の自然」と「本物の食材」で本来の自分の時間を味わってほしい~

段戸牛セット生産者:株式会社たけうち牧場 代表取締役 竹内通王さん

設楽町の最高傑作「段戸牛」

段戸牛は、現在、東京都港区赤坂のミシュラン2つ星「菊乃井」や京都市左京区にある「肉洋食オオタケ」、名古屋の錦、伏見などの高級飲食店、豊橋市の「ホテルアークリッシュ豊橋」などで取り扱われているブランド牛だ。脂の融点が低く、さらっと溶けて甘みとともにうまみが口の中に広がる。そのため、脂が体の中に残りにくく、次の日に胃もたれをしない。
こうした段戸牛を生産できたのは、一つに設楽町名倉地域にある段戸山を望む標高900mの緑豊かな「駒ヶ原高原」で飼育している点だ。この駒ヶ原高原のおすすめは「水」であり、天然の状態でも保健所の許可がとれるほどだ。段戸牛の生産者であるたけうち牧場の竹内さんは、深井戸ボーリングにより地下102mより水を汲み上げて、それを牛の飲料にしている。また、この地域は、夏でも朝夕は冷えるメリハリのある気候風土であり、牛のストレスがない。
二つに、牛の飼料だ。トウモロコシ、豆、県内産の飼料米などを配合する。また、関谷醸造の酒粕を出荷前の一定時期に食べさせている。愛知県食品工業試験所で分析した結果、牛に酒粕を食べさせると、脂の融点が下がり、うまみが増すことが分かった。このほかにも、牛の敷料となるおが粉は設楽町の製材工場から仕入れている。
このように段戸牛は、この地域の水と気候風土、地元設楽町の事業者の想い、そして生産者の竹内さんの愛情が詰まった「設楽町の最高傑作」だ。

生産地「駒ヶ原集落」の開拓精神

駒ヶ原集落は、戦後、満州から帰ってきた愛知県出身の人たちが開拓した集落だ。昭和22年頃に23軒が入植し、なにもないところから、一つ一つ開拓してきた。名古屋市場が近いので、ヤマゴボウや白菜など色々な野菜を作り、特にキャベツは名古屋市場にも受けがよく指定産地になった。
現在は、12軒の集落である。ハウス園芸関係(花・トマト等)、畜産農家、運輸企業など自営の方が暮らし、道路の清掃などは住民全員が参加するなど、地域が助け合って生活している。15年前、地域住民で名倉小学校駒ヶ原分校跡を活用した丸太小屋プロジェクトを立ち上げ、丸太小屋2棟、バーベキュー施設、ピザ窯のほか、昨年は、水洗トイレを地域からお金を集めて作った。そして、この地域に親しくなった人がキャンプをしたり、会員を対象に植樹会をすることで、駒ヶ原ファンを増やしている。このように、駒ヶ原では、生きたお金は使うものという、開拓の精神が今でも根付いているのだ。

段戸牛生産者「竹内通王さん」の歩み

竹内さんは、開拓者の2世であり駒ヶ原集落の出身だ。幼少は名倉小学校駒ヶ原分校に通った。高校は、安定した職業に勤めてほしいという親族の要望から、半田農業高校醸造課に入学し、卒業後、碧南市にある酒造メーカーに就職した。しかし就職後、なにか人生が違うと感じていた。長野県八ヶ岳にある農業学校を見学した際に、その学生から、「地元秋田の大規模農業をやる。」という将来ビジョンに触発され、自分のやりたいことが自営であると感じていた。そこで、入社1年で退職して同農業学校に入学し、レタスなど高原野菜を1年間学んだ。19歳の時だった。
その後、地元に帰ってきたが、高原野菜だけでは年間を通してピークが限られてしまうことに危機感を抱いていた。その時、たまたま乳牛の雄の肥育が始まった時期であったことから、畜産を起業しようと思い、瀬戸市にある畜産農家へ研修に出た。そこでの経験から、自分でもできると考え、22歳の時、地元の駒ヶ原で起業した。何もないところから始めた。古い材を買ってきて、手作りの小屋を建て、牛を飼い始めた。そして、500頭まで事業拡大しようと、新たな土地を拡大し、今日に至っている。

起業の苦労と気づき

起業して最も苦労したことは資金繰りだ。駒ヶ原の農地は資産価値がなく借入が難しかったため、農業育成者の資金や、農業近代化の資金などを借りながら経営を行った。しかし結果的に、これが事業として成功した要因となった。
少しずつ経営を改善しながら規模を拡大して、経営のノウハウを身に着けてきたことがよかった。「現在、自分がやりたいことをやれるのは、自分がやりたいと思ったことを変えないで取り組んできたから。短期間では分からないが、長期間でみれば、その時は逆風でも次の時期は順風になるのが分かってきた。」と竹内さんは言う。
そして、成功した一因に竹内さんの父親の存在もある。父親は開拓者の一人で、キャベツ栽培や真夏いちごのハウス栽培などを自営していた。固い人ではあったが、世間の動向をよく見る人であった。竹内さんが「牧場をやりたい。」と言ったとき、この先それが伸びる可能性があると考え、「自分の責任の範囲でやってもいい。」と反対しなかった。また、竹内さんも、基本的に、父の下で働きたくない、自分自身で新たな仕事をつくるという、開拓者の子孫としての強い決意があった。

農園レストラン「ばんじゃーる駒ヶ原」誕生

これまでの段戸牛の生産事業において、日本の農業政策の輸入自由化によるアメリカ産、オーストラリア産の牛肉との価格競争や、口蹄疫、狂牛病の流行などで、牛の価格が下がり困難な時期があった。日本で一番大きい東京芝浦の市場に出荷していたが、狂牛病の時でも松阪牛などのブランド牛は値段が下がらず、東京市場ではそうしたブランド牛との格差を目の当たりにした。東京市場はとても大きく魅力的なものだが、自分の牛がどのように商品化され販売されるのか、最終消費まで見えない。そこで竹内さんは、食べておいしいと感じる人に直接売っていきたいという想いから、東海地方での販売に路線変更した。牛肉の移動販売の免許を取得し、東海地域の店舗へ直接商品を届けたり、道の駅どんぐりの里いなぶなどで実演販売を行うなどしてファンを増やした。移動販売は5年以上続けたが、最後は4トン車でないと配れないほど忙しくなり、移動販売を取りやめ通信販売を始めるとともに、農園レストラン「ばんじゃーる駒ヶ原」をオープンした。
「ばんじゃーる駒ヶ原」は段戸牛ステーキや段戸牛シチュー、カレーのほか、炭火焼バーベキューなどがメニューとして並ぶ。そして、段戸牛以外の食材は、地元設楽町産の食材を使用している。米は「名倉米ミネハルカ」。いもち病に強く、無農薬なのが特徴だ。トマトは設楽町名倉地域のルネッサンストマト、かぼちゃやじゃがいもは自家栽培のものを使用している。そして肉につける塩は、新潟で製造されている「藻塩」だ。素材の良さを引き出すものを、と竹内さんがこだわって選んだものだ。お客さんからも好評で店頭でも販売している。
そして、こだわりのある食材を使った料理を一層引き立てるのは、なんといっても段戸山を見上げることができる大自然だ。店の裏に流れる川のせせらぎを聞きながら、時には川に入って水の冷たさを実感しながら、夜には満天の星空、街では感じられないぜいたくが、そこにはある。来店いただいたお客様の中には、子供がこんなにご飯を食べると喜んで帰る人もいる。幼いころに本物を味わうと、大人になって食材の良し悪しを判断する基礎ができる。「ばんじゃーる駒ヶ原」は、地域の協力もあり、この地域ならではの本物を提供している。
竹内さんは、こう考えた。「この先、農業者が消費者に自分達の商品の良さをどうPRしていくかが問われる。現在の日本の牛肉はほとんどが輸入品に頼っており、狭い日本でもやり方を変えればもっといい農業ができるし、消費者と農業者との関係が構築できる。」
「ばんじゃーる駒ヶ原」は、生産者と消費者が近い場所で触れ合いを持てる場として大事にしていきたい、利益よりも来た人に食の良さとこの地域を楽しんで喜んでもらえるようになってほしいという想いを描いている。

モニターの皆さんに伝えたい竹内さんの想い

人間は、自然界の数多くの生命の一員で、自然と共存しないと生きていけない。そういうことが都会では見えにくくなっている。ここにいると、その「当たり前のこと」を当たり前に実感できる。また、現在、コロナ禍において、人間として自分自身の生き方、生き様が問われているのではないか。普段は生活のために会社に行き、満員電車で通勤していても、自分の自由になる時間は本来の自分を解放するために田舎暮らしをする。そういう場所になれたらと思う。もう一つの自分を発揮し、新しい人間関係を作れるような場所になれば面白い。
「ばんじゃーる駒ヶ原」で働く従業員は現在10名。これまで町内から通う方、駒ヶ原集落に移住した元美術教員の方、安城や豊橋など町外から通う方などがいた。特に、町外から通う従業員には、宿泊して働けるように寮を整備し、田舎で喜んで働いてもらうことで、良い接客をしてもらえるようにしている。ここに来る従業員の方は、お金ではなく、それまでと違う人間関係、職場環境の中で体験して働いてみたいという想いがあり、「ばんじゃーる駒ヶ原」はそれを叶える場所でもある。いろんな人間関係を楽しくつくっていきたいという想いがあり、こういうところが交流の拠点になってほしいと願っている。そのため、店を閉めている冬の時期(1月~3月)や店が開いている時期(4月~12月)の定休日(火・水・木)は、企業の研修など域外の方にも使ってもらえるようになれたらと考えている。
自分たちの生き様を見せていきたい、駒ヶ原という12軒しかない集落ではあるが、「駒ヶ原ブランド」をつくりたいという想いがある。地方にはまじめにつくった本物があり、それを味わってほしい。「本物」を「本物の自然」の中で味わってほしい。
そして、地域のブランド力を高めるとともに駒ヶ原ファンを増やすことで、みんなで一緒に協力して地域を盛り上げていける。みんなで集まって、湖を一周するウォーキングや、段戸山までの山登り、遊歩道を整備するなどの目標があってもいい。なにかやったことが、将来に結びつく達成感を味わってもらえることなら気持ちがいい。様々なストーリーを持った人たちが年齢性別に関係なく集まってほしい。
ただし、ここは小さな集落だけにいきなり溶け込むのかと不安に思う人もいるだろう。まずは、たまに遊びに来てくれればいい。移住までいかなくても、味わって、体験してもらって少しづつ関係性を深めていけば、この地域の活性化にもつながると思う。
今回のモニター商品を食べていただくことで、それを通じて自分たちの人生を振り返るきっかけになり、こちらに足を運んでいただき、本来の自分の時間を味わってもらえればと思う。この駒ヶ原という地域が、皆さんの自分探しができる場所になればうれしい。

編集後記

豊田市足助町からご来店されたお客さんに、インタビューをさせていただいた。
オープンしてから、毎年1~2回特別な日に来店している。お気に入りの理由は、周りに自然があり雰囲気が良いためである。またオープン当時の従業員の接客が良くファンになった。おすすめのメニューはもちろんステーキとのこと。
今回はお孫さん夫婦が敬老の日のお祝いに連れてきてくれたが、お孫さん夫婦は実は初めての来店。世代を超えてファンが広がっている。

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